2016-03-29

自由に音で遊ぶために




行きは登りでしんどかったこのなが〜い階段でしたが、帰りは眺めもいいし、気分もよかったです。軽快に小走りで降りていく小学生と、ゆっくりと歩みを進める高齢のおばあさまにすれ違いました。

今日は大類朋美先生のスタジオにお招きいただき、即興と音楽教育についてお話してきました。

先生は洗足学園や国立音楽大学でのピアノ指導をされています。大学で指導する中で、学生さんがそれまで長い期間音楽を学び続け、さまざまな理論を学び、難しい曲を弾きこなす技術を身につけても、卒業後に音楽自体をやめてしまう人も沢山いることに問題を感じているとか。

地域社会のいろいろな人と音楽を通したつながりを目指して、「ティーチング・アーティスト」として活動するピアニストでもあります。リサイタルを開催するほか、地域の小学校、美術館、養護施設等でのアウトリーチ活動を川崎市を拠点にリトルクラシックという名前で展開されています。

こうした指導や活動の中で、編曲や即興の力に可能性があるのではないかと思い、自ら勉強を始められたそうです。初めてお会いしたのは昨年神戸で開催された日本音楽即興学会の大会でした。1つ前の京都大会で僕が発表した「即興を軸にしたソルフェージュ授業の研究発表」にも関心を持ってくださっていたそうで、今回はその時の内容を中心に、クラシックの演奏につながる即興を使った授業アイディアをお話しました。

理論と実践をつなぐ即興についていろいろ話していると、子どもの時には自由に遊べているのに、だんだん知識や経験が増えることが自由を奪っているのではないかという気もしてきます。自由に音で遊ぶための心構えを考えるよい機会となりました。

大類先生と久保田慶一先生との共著「音大生・音楽家のための英語でステップアップ〜音楽留学で役立つ英会話50シーン」(スタイルノート、2014)もオススメです。留学する前に欲しかったなぁ、こういうの。

2016-03-22

春の埠頭で波とカモメに耳すまし!

ふじを案内してくださった山口学芸員によると、
普段から風の強い港でも今日は特別に風の強い日だったそうです。

南極観測船ふじ
17時少し前から南極観測船ふじ前チケット売り場で集まり、
名古屋港に30年ほど停泊しているという、
「南極観測船ふじ」に乗り込みました。

当時は幹部のミーティング室として使われていたお部屋で、
ワークショップの概要説明。参加者の自己紹介の後、
ヘリポートのある甲板に移動。
みんなで輪になって、最初の呼吸のワークが始まりました。



足の裏を感じたり自分の内側を落ち着けた後、
その場で360度から届く音に耳を澄まします。
次にいくつか伝えられた聞き方のポイントを踏まえて、
場所や向きを変えて、各々が散らばって船上からの音を味わいました。

船を降りて、ポートビルのある埠頭の周辺でさらに応用編に。
楽譜のように音を聴いてみたり、見える風景を音楽にしたり、
音の地図を思い描いたり、
それを地層のように高さの違うレイヤー(層)にしてみたり、
やったことも考えたこともない問いかけでしたが、
子どもも大人もみんなで取り組んでいきました。

美術作品のようなゴツゴツの水栓

犬と散歩する人、音を出さずにトランペットの練習をする女の人、
つどいの広場からはバンドの演奏が。
だんだん日も沈み始め、人もまばらに。

寒くなってきたので、ポートビルへ移動し、最後の対話。
部屋の電気を消し、暖かさにほっとしながら、
日が沈む紫色の海を窓越しにしばらく眺めました。
体験したことや気付きをお互いに交換。
「おなかいっぱいで言葉にならない」という方もいましたが、
お互いのチャレンジに拍手を送り合って、解散となりました。


名古屋港ポートビルと沈む夕日

春分の日の翌日、埠頭でじっくりと味わった非日常。
参加した皆さんは、明日から聴くことをどんな風に楽しんでいくのでしょう。

ワークショップはまた今後も各地で行っていきますので、
今回参加できなかった方もぜひ一度体験しに来てみてくださいね。

*************************
『やさしい自然の聴き方 in 名古屋〜春の埠頭で波とカモメに耳すまし』
日時:2016年3月21日(月・祝) 17:00 –19:00[受付開始]16:45
会場:名古屋港エリア一帯
集合場所:南極観測船ふじ前チケット売り場
イベントページ [http://bit.ly/mlsj07]

今後の活動はこちらでチェックして下さい。
『やさしい自然の聴き方』プロジェクトFacebookページ
https://www.facebook.com/akousophia/ 

ほんとうにつながっているということ A HAPPY DAY

いやはや、言葉にできない、したくない、
とても大切な1日になりました。
(でも書き出そう。)

朝は母から保育園時代の僕と姉のエピソードを聞き、
いつもお世話になっている鍼灸の長岡先生に
からだをメンテナンスしてもらってから名古屋港へ行きました。


ふじを学芸員の山口さんと下見したあと、
控室で岩崎洵奈さんのピアノを壁越しに聞きながら、
相模原、豊田、町田、八王子、調布、西尾とやってきた
『やさしい自然の聴き方』のこれまでの資料をまとめたファイルを見直し、
ここまで支えてくれた人達や出会った人達の顔を思い出し感謝。


午後は日本イエナプラン教育名古屋支部の方たちと
実践者をどうしたら増やしていけるのか意見を交換。
夏に向けていろいろと面白い動きになっていきそうです。

そして夕日の沈む名古屋港でワークショップ。
予想してた以上に風が強くて、
ちょっと自分は防寒対策が甘くて寒かった。

船や港、広場に夕暮れ、風に波。
舞台も演出も、もちろん想像してある程度計算してたのだけど、
いろんな要素が作用しあってくれて、偶然もたーくさん起きて、
とてもいい時間になったと思います。世界よ、ありがとう。

参加いただいた方のコメントからも
豊かな気付きを沢山いただき、幸せでした。

関わる人、流れていく時間、訪れる場所。
ほんとうにつながっているということ。

私たちに今日も沢山の幸せが起こりますように。

2016-03-19

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法〜『小さな世界』を立奏で(その4)

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法について、
先日実際に行った授業の内容をまとめるレポートの最終回、第4回です。

第1回は目標設定や全体の構成と、実際の授業の導入部分まで。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world1.html
第2回は鍵盤と指遣いまでをお伝えしました。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world2.html
第3回は呼吸を使った奏法と、最後のメロディー「ただ一つ」の指導をまとめました。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world3.html

今回は「立奏のコツ」と、全体のまとめを書いてみます。

【5−1.立奏のためのコツ〜ホースを使う】
40分の授業で、残り4分ないぐらいでしたが、
ここからどうにか立奏の指導に入ります。汗

事前にメールで提案して相談していたことでしたが、
立奏用唄口という短いものが楽器とセットになっていますが、
僕はこれは薦めません。立奏でもホースを使用してもらいます。

これが立奏用唄口(スズキ)


こっちが卓奏用唄口(ホース)


なぜ立奏用唄口だと良くないのか・・
  1. 短い吹口を使って構えると、鍵盤が良く見えない!視認性が悪い。
  2. 構造上トランペットやクラリネットと違って、
    鍵盤を右手で押さえる衝撃が直接口元に来てしまって不安定。
  3. 楽器を顔の近くまで持ち上げて支え続けるというのが、
    子どもにとっては重たい。
といったような幾つかの理由から、立奏だろうと座奏だろうと、
鍵ハモはホースにかぎる!というのが自説です。

【5−2.立奏のためのコツ〜持ち方と構え方】

肩幅ぐらいに足を開き、まっすぐに立つ。
猫背にも反り過ぎにもならないよう胸をひらいて姿勢よく。

楽器を持つ左手は緊張しない程度に開き気味に。
鍵盤がぐらついたりしないように支えます。
子どもの場合は特にですが、楽器を持つ左の肘は
体側につけておいたほうが、楽に長時間安定して持っていられます。

ホースを使った立奏なら、楽器を自分が
いちばん弾きやすい場所や角度に持ってきて演奏できます。
ただなるべく鍵盤を見なくても弾けるように、
音の場所をからだで覚えておけると良い演奏につながります。

オランダにいた頃のパフォーマンス『ROCE to ONE』より

踊ったっていいんだぜ!『ミュージサーカス』@足立市場

みんなで立奏で吹いたところでタイムアップとなりました。
できるようになっていく子どもたちの笑顔を見るのは楽しいです。

【全体のまとめ】

*呼吸のことをぜひ入れて欲しい。
鍵盤を正しく弾くことに終止してしまうと、
音はあっていてもぶっきらぼうな演奏になってしまう鍵ハモ。
呼吸を使って、歌うように表現することがとても大切です。
息の量やビブラート(揺らす)で音に表情が生まれます。

その辺りまで全員が行けるようにするのは
なかなか大変だと思いますが、
そもそもそういう「気をつけることがあるんだ」を伝え、
知るだけでも、違いが出てくると思います。

*個人差をどう生かすか。
1年生でもすでに幼稚園からやっていたり、
ピアノを習っている子もいたりして、
どうしても個人差があるので、
一斉授業でどのくらい全員を伸ばせるのかは難しいですね。

課題を細かくステップにすることで、
できない子にできている子が教えやすくなるので、
教員が直接個別指導できないとしても、
子ども同士が教えたり教わったりする関係性を教室内に作れると思います。

高校や大学に比べて多様な子がいるのが小中学校までの
難しさでもあり魅力だと思います。
言葉だったり(歌詞)、視覚的なものだったり(音形)、
発見が得意だったり(分析)、
いろいろな切り口で活躍できるところを授業の中に散りばめることで、
いわゆる音楽以外が得意な子どもも、
クラスに貢献できるチャンスが増えます。

鑑賞も演奏も想像も切り分けずに、一つの素材を
くどくどといろいろな角度から見てみると、
結果的に多様な子どもたちが生き生きと
するクラスになるのではないでしょうか。


*先生(自分)がうまく演奏できない場合。
保育士や小学校の低学年だと専門で音楽を勉強していない先生方が
音楽を教えていらっしゃると思います。
知識がないとか、演奏が下手だとか悩む人も多いようです。

ただ一つの考え方として、
先生がプロのような上手な演奏者じゃなくても、
聞き所が分かっていたり、問いかけが上手ければ、
子どもたちの良い演奏や音楽を引き出すことはできると思います。
「教える」から「コーチ」や「ファシリテーション」型の指導に
気持ちを切り替えるだけでぐっと楽になると思います。

模範演奏ができなくたって、それは子どもたちと
「いい音楽」を一緒に模索するチャンスなんです。
もちろんCDを使うとかもいいと思いますけどね。

もし先生の中に苦手意識があるなら、そこは認めてしまって、
そのクラスの中にある才能を信じて、任せてみてはどうでしょう。
それは音楽家の模範演奏ではないかもしれないですが、
クラスの友達が精一杯考えてやってくれた演奏から、
他の子たちが学べる部分がたくさんあるはずです。

これはほんの一例ですが、
どんな方でもその教員とそのクラス全員でしかつくれない
バランスの学びがあると思うので、どうか自信をもって、
音楽を楽しんでいただけたらと思います。

【感想をいただきました。】

1年担任の先生から早速お礼のメールをいただいたので、
一部ご紹介します。
子ども達も口々に楽しかったといって喜んでいました。また、子どもの個人差にも応じた指導はとても勉強になりました。なかなかできない子どもに対しても、橋本さんが分かりやすいアドバイスをすることで、子どもが理解する場面がいくつか見えました。授業ではなかなかできない子ども達のうれしそうな顔が見えました。短い時間の中で、こちらの意向も十分考えて下さり、お願いして本当によかったです。
座間市立相武台東小学校の皆さま、
鍵ハモの魅力を伝える機会をつくっていただき、
ありがとうございました。

日々ひとりひとりと向き合っている先生方には
とてもかないませんが、精一杯授業させていただきました。

未来をつくる子どもたちに楽しい学びの環境を
一緒につくっていきましょう!!



全4回のレポートもこれで終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
よろしければ、こちらの投稿も読んでみてください。
「中日こどもウィークリー」に鍵盤ハーモニカの講師として載りました。 http://bit.ly/1SgZKZY

昨年、『1日限定、鍵ハモ100隊結成!』という企画を行ないました。
「第1回事前練習がおこなわれました! | BUN-KA web」(外部サイトへ飛びます)
http://bit.ly/1VE63V1

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法〜『小さな世界』を立奏で(その3)

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法について、
先日実際に行った授業の内容をまとめるレポートの第3回です。

第1回は目標設定や全体の構成と、実際の授業の導入部分まで。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world1.html
第2回は鍵盤と指遣いまでをお伝えしました。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world2.html

今回は鍵ハモの演奏でとても大切な、
呼吸による奏法の指導から、
難しいフレーズの練習のコツまでをお伝えします。



【4.呼吸を使って〜指はそのまま、滑らか演奏】

鍵盤と指を確認したうえで、
息を吹き込み、一息で「ソーシーソーラー」(まだリズムにしない。)
をステップ3でやってみました。

ここから実際のメロディーのリズム
「ソーソシーソ、ラーララー」にする時に、
同音が続くところを、「鍵盤を押し直す方法」とは別に、
鍵盤ハーモニカの場合もう一つ、
「息を使って音を切る方法」があります。

実際にやってみるとよくわかりますが、
息を出したまま鍵盤を押し直すと、音の鳴り始めがはっきりします。
一方鍵盤を押さえたままで、息を使って「トゥートゥー」と吹くと、
もう少し柔らかい鳴り方をします。

(ここからは演奏解釈、好みの問題ですが、)
この曲の冒頭「世界中、誰だ〜って・・」は歯切れ良く元気に、
(スタッカートやアクセントを使って)
今回鍵ハモで演奏している後半部分
「世界は狭い、世界は同じ・・」は
なめらかに(レガートで)演奏すると、
メリハリが付きますし、
それが合わさって演奏された時にも
お互いに違いが引き立つようになり、いいと思います。

息を使ってトゥートゥーと同音を切るやり方で、
演奏してみました。

そして、各フレーズの始まりの長い音で、
息を使って広がり(音を少し大きく)をつくったり、
終わりの(2分音符)長い音をすこ~しビブラート(揺らす)とか、
呼吸を使った奏法の可能性をちらっと紹介。
(40分ではここまで踏み込んで指導でけません!
長く息をコントロールする方法とか、練習法とかは
そのうちまた改めて。)

*息が続かない、足りない場合。
結構「吹きすぎ」で「息が足りない」と言っているケースも多いので、
大きい音をさらに大きくよりは、
小さい音量の調整でメリハリをつける
という方向性の方が上手くいく場合が多いです。


【最後のメロディー:ただ、ひーとー、つーーー】

さぁ来ました。ラスト!
「シラ、レーファ#ー、ソーーー」
はい、ここがめちゃくちゃ難しいです!!

何かというと、ラからレへの5度跳躍があり、
さらにすぐシャープ(黒鍵)が出てきます。
コケどころ満載です。

これは1年目でやるには実はとても難しいフレーズで、
あまりに丁寧に全員できるように・・、とやっていると
「いやになっちゃうよ〜」(「およげ!たいやきくん」で。)
という部分です。

歌詞もありますし、本来「ただひとつ」を音楽的には
一息で演奏したいところですが・・。
可能であれば、担当するメロディーを
「せーかいーは、まーるいただ」と「ひーとー、つーーー」の
2小節ごとに別のグループに分けてしまい、
跳躍を弾かずに済ましてしまう!!
という「逃げの解決法」が一番平和なのです・・。




【困難な壁は、分解して取り組め!】
こういう「難しいフレーズは細かく分けて練習」
というのがセオリー。

まずは「シラレー」そして「レーファ#−」と練習し、
後からつなげる、という流れで進めます。

もともとの教科書の運指だと「シラレー」は3−2−1でしたが、
4−3−1に変更することで、
少しでも短い親指が弾きやすい形に近づけます。

1.4−3−1と指を動かす練習
2.「シラレー」と鍵盤で指を動かす練習
3.息も使って音を出しながら「シラレー」
4.「シラレー、シラレー、シラレー」と繰り返し演奏。

ここでも焦らず順に段階を踏ませるのが大切です。「急がば回れ。」
後で個別指導を戻ってするよりも、みんなで丁寧にやっていったほうが
最後までたどり着ける人数が増えて、結局は効率的です。

「指と手の形をまぁるく、橋の形(アーチ型)に」とコメント添えて、
個別に丁寧に見たいところですが、
ここはポイントを伝えるので時間的に精一杯でした。

次の「レーファ#−」では、改めて楽譜の仕組みを説明。
「楽譜の各段の左側にト音記号がありますね。
ここ(ファ)にシャープがついていて、“この曲の中では、
いつでもファにシャープを付けてね”という意味です。」

「ファはどこですか?シャープはその右の黒鍵。
黒鍵3つグループの一番左ですね。」と説明したうえで、
「レーファ#ー」を指で押さえ(まだ音を出さない)、
次に息も使って音を出します。
あくまで、しつこくこのステップを踏んでもらいます。

ここまでやってから、
「シラ、レーファ#ー、ソーーー」
に挑戦しましょう。
思っているよりはできる人が増えていると思います。Good Luck!

【すべての復習】
ここまでの内容をもう一度黒板も使いながら復習し、
ポイントを確認して、つなげて演奏してみます。

子どもでも大人でもすぐ忘れます。涙
必ず学習した内容を、授業の終わりの方でまとめる時間を取りましょう。
これで記憶の定着率がぐっと変わるそうですよ。

全部の要素はうまく弾けないでしょうが、まぁいいのです!
これまで2回の授業で何度も演奏したメロディーが、
今回の授業を通していろいろな角度から味わうことができて、
それらを演奏しながらふと思い出す事ができればOK。立派な成長です。
(もちろん本番が先で、まだ授業があるからこう言っているのですが・・)

次回は立奏のコツと、全体のまとめを書いてみます。
いよいよ最終回です!
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world4.html

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法〜『小さな世界』を立奏で(その2)

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法について、
先日実際に行った授業の内容をまとめるレポートの第2回です。
課題曲は『小さな世界』です。

前回は目標設定や全体の構成と、実際の授業の導入部分までをお伝えしました。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world1.html

今回は鍵盤と指遣いのところを書いてみます。


3−1.鍵盤と指づかい




「指遣いを1・3・1・2にして、順番に隣に移していけば簡単だよ」と
「引越し」に例えて指導方針をまずは手短に伝えました。
(担当教員にはメールで事前にこの指遣いをお伝えしていました。)
すでに2回の授業をやっているので「おさらい」ですが、

段階をつくって、習得しやすい形で弾けるように誘導します。

*指番号と指の連動
「右手を出して〜」(手を上に挙げてもらう)
講師が背中を向けて、手を見せながら「言った数字で指を動かします!」
適当に「1,3,2,1」次に「1−2−3、3−2−1」などつながりで。
最後に「1−3−1−2」で確認。

*鍵盤上での運指
「そのまま鍵盤の上に手をおいてみるよ〜」
「ソに親指。
まだ音は出しません。
で、鍵盤上で「1−3−1−2」で「ソシソラ」を押せるか確認。

これらをスピーディーに駆け抜けるように展開します。
ゲーム感覚で乗せます。すでにデキる子も喜んでやってくれます。


「わからない人は手を上げて〜」「周りの人は教えてあげて〜」
と指示出しをして、講師と教員でもフォローに周りました。
最初の指番号で動かすゲームができたら、
鍵盤の上で「1−3−1−2」で動かすというのは、

1年生なら全員がその場でもなんとかマスターできる内容です。
ここまでを必ずきっちり皆ができるようにする事を、
今回は特に重視しました。
担任以外に、補助の先生もいたので、
大人3人でここの指導をやれたので助かりました。



*息を吹き込み一息で
「じゃぁ、音出すよ〜」
ソーシーソーラー(まだリズムにしない。)

*「実際のメロディーのリズムにしてみよう」

ソーソシーソ、ラーララー

ここは完成度よりも先に進むことを重視。
これから何回も繰り返すからです。


3−2.「隣に引越し」アプローチ


最初の2小節ができるようになったら、

親指、人差し指、中指(1−2−3)を
「ラシド」「シドレ」にそれぞれ移せば、
メロディーの3/4にあたる6小節が弾けるようになります。
「親指をラに置いて」ラーラドーラ、シーシシー
「次はシに置いて」と順に演奏。

これは結構やりがいのあったアプローチで、
あきらかに最初やる気が無い、諦めていたような子が、
「あ、できたー」「できました〜」「見て〜」と
どんどん長いフレーズを弾けるようになっていったので、
有効なアプローチでした。

「意味がわからない」という子も何人かいたので、
そういう声が聞こえたら個別に対応したり、
周りの友達に教えてもらって、かなりの割合で
理解してもらえたかなと。


【指番号について】
ピアノを習っている子もいたり、幼稚園ですでに何年か経験がある子もいたりと、個人差が大きいのは指導上の難しい点だと思います。

もともとの教科書の楽譜に書いてあった指番号では、
小指(5)まで使うようになっていますが、1〜4(親指〜薬指)まででやってもらいました。

もちろん5指が自由に使えるのは素晴らしいですし、そこに取り組めるチャンスでもあるのですが、今の授業の時間だけでそこまで全員を引き上げるのは、なかなか難しいのが実情かと思います。


小指を使うというのは、とても不安定なので、そこを苦労して「難しい、できない」となるよりは、シンプルな指遣いで応用が効く、今回のようなアプローチは小さい子どもたちが取り組む場合に、(この曲にかぎらず)基本的な考え方にするといいように思います。


また幼稚園・保育園などでは2,3,4の指だけで演奏指導するように
運指を考えるというのもいいと思います。

親指(1)を使うのも手の形を良くしたりするのが難しかったりするためです。

指番号は本当は正解は一つではなくて、
「自分の弾きやすいものを探す」というのが、
最終的には理想のあり方なのですが、
一斉授業の短い時間の中でやっていくためには、
「運指を揃える」という形が現実的だと思いやっています。


【オプション:『2分でわかるドレミの場所』】
この「鍵盤と指づかい」の過程で、
音名と鍵盤の位置がどうもあやしい子がいるようだったので、
(「シールを貼っているから分かる」から卒業してもらうために、)
「鍵盤の場所の確認」をいまさらですが、やってみました。
これは導入期にぜひやっていただくといいと思います。
  1. 白い鍵盤と黒い鍵盤があるね。
  2. 黒い鍵盤が2つのグループと3つのグループがあるよ。
    手をピースにして、2つ並んだグループがある場所を探して押してみよう。
  3. 3本指で黒鍵3つグループを押してみよう。
    ※ここまでで、繰り返すパターン(オクターブ)があることも理解できます。
  4. 3本指が山って漢字みたい。この黒鍵の間にあるのが「ソとラ」です。
    「山の間に空(ソラ)が見えた」と覚えましょう。
    ※園児だと漢字知らないので「ちょっと高いから山」と言う時もあります。
  5. 空の上にあるのは白い雲。ラの隣が(シロの)「シ」です。
  6. 隣の黒鍵2つグループも気になるので見てみましょう。
    「どれどれ(ドレドレ)」⇒シの隣が「ドとレ」です。
  7. 「どれどれ、ミてみよう」の「ミ」と次まで教えてもいいですね。
    ドレミという並びは歌などですでに聞き覚えある子が多いので、
    ドレが分かれば「ミ」は比較的簡単に覚えられます。

まとめると、

「空、白い雲、どれどれ見てみよう!」

黒鍵のパターンから場所を探すというのが、

プロでも無意識にやっている位置の確認方法です。
「ドーナツ、レモン・・」など「ドレミの歌」もありますが、
イメージと結びつけることで、覚えやすくなるというやり方の提案です。
「どんぐり」とかなんでもいいんですけどね。


「ドレミファソラシド」という並びの言葉=音名自体は
呪文のように覚えてしまうのが一番。
「ドシラソファミレド」の下降バージョンも音名並びの呪文として
知っているといいですね。

ただ、鍵盤の場所と音名を結びつけるというのは、
これはこれで別の作業です。

楽譜を見て、音名が分かって、鍵盤の場所と結びつけて、
リズムも感じながら演奏する。実は複雑な変換作業を沢山やっているんですね。


【ちょっと寄り道・・】
「ソ・ラ」同様に、黒鍵2つグループの間が「レ」と伝えて、
「レ・ソ・ラ」3つの音だけ
(あるいは「空見れば」で「ソ・ラ・ミ・レ」の4つの音だけ)
まず覚えてもらうというやり方もあります。

この3つか4つだけでも童謡などが歌えたりするからです。




「ドレミ」よりも「ソラ」から先に教えるのが、橋本式のやり方です。
このソとラだけを使ってリズム即興をしてもらったり、
音量の大小や、短い長い、高いソラ低いソラなど、
さまざまな音楽の基本を伝えることができます。

「ソラの曲」と呼んでいる指導方法で、音楽の基礎知識はもちろん、
即興演奏もできますし、「夏のスカッとした空」とか「どんよりした空」など
イメージから演奏につなげることで、表現力にも結び付けられるなど、
かなり深いところまで「ソラ」二音だけでも、持っていくことが可能です。

*****
さて、レポート2回目はここまで。


鍵盤ハーモニカは鍵盤楽器と吹奏楽器のハイブリッド。
呼吸というのが実はものすごく表現力と関わってくる大切な部分です。

次回は
4)呼吸を使って〜指はそのまま、滑らか演奏
5)立奏のためのコツ
についてお伝えします。

レポートの続きはこちら・・
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world3.html


小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法〜『小さな世界』を立奏で(その1)

3月18日(金)に座間市相武台東小学校で、
鍵盤ハーモニカの授業をしてきました。
その内容を4回に分けてレポートしてみたいと思います。
この記事はその1回目です。

小学校や幼稚園・保育園で指導にあたる先生など
もし使えそうなアイディアがあれば参考にしていただければ幸いです。

1年生40分授業を3クラスを対象に、
午前中に連続して3回行ないました。

入学式に向け『小さな世界』が課題曲。



世界中 誰だってほほえめば 仲良しさみんな輪になり 手をつなごう小さな世界  

世界は狭い 世界は同じ
世界は丸い ただひとつ
作詞/若谷和子 作曲/シャーマン兄弟

う〜ん、世界平和。いい曲だなぁ。

有名な曲ですが、今回指導にあたって
もう一度音楽を見てみると、

いろいろと発見もありました。

噛めば噛むほど美味しい楽曲の深さとともに、

鍵盤ハーモニカを使って演奏するためのコツを、
どりゃ〜っと40分に詰め込んでみましたよ。



こちらが『小さな世界』の楽譜
では、授業の詳細をご紹介していきます。



2016-03-15

幼児期の「できた!」という経験が自尊感情を高める

先日、調律師三矢さんの紹介で伊勢原山王幼稚園を訪問し、園長先生たちとお話をしてきました。古くから霊山として信仰されてきた大山の麓。この日も霧に包まれた大山はなんだかちょっと怖いような、自然が見守る土地だなぁと感じました。



伊勢原山王幼稚園は定員360名という普通の倍以上もある大きな園です。2歳からメロディオン(鍵盤ハーモニカ)に取り組んだり、跳び箱も全員ができるようになって10段を跳ぶ子が何人もいたり、(10段ですよ、身長を越える壁のような高さ!)カラフルな絵本ノートで1000冊を越える読書をする子が出たりと、それはそれは素晴らしい実践を続けていらっしゃいます。少子化の中、毎年園児の数が増えていっているというのも納得できました。

「できた!という経験を幼児期に沢山持って、小学校に行って欲しい」と話されていました。“必ず全員ができるようになる”という信念のもと毎日の積み重ねや試行錯誤が、こういう結果を出しているようです。見習わなくては。

世界中で行われた子どもの自尊感情に関する調査では、国によらず幼稚園あるいは保育園から小学校に入学すると、「自尊感情」ががくんと下がることが報告されています。自尊感情というのは自信や、自分には価値があるんだと肯定するような気持ちのこと。大学入試につながっていくような偏差値による評価とか言語や数字・論理を中心とした教育の中で、比較され萎縮していく子どもたち。



全員が大学教授や研究者になるわけではないのですから、きっともっと多様な学びの形と、健康や幸せになるための生きていく力や自ら学ぶ力が育つような環境をつくっていく必要があるのでしょうね。人の思考のベースになる部分は6歳頃までにできあがると言われています。幼少期に沢山の失敗と挑戦から自信をつけた子どもたちは、きっと社会をたくましく豊かにしていってくれると思います。

さて、4月に伊勢原山王幼稚園で保育士の皆さんに音楽・表現教育についてのセミナーをやらせていただける事になりました。ことばやからだと繋げながら、技術はもちろん音楽を通して表現力を伸ばす具体的な方法を話す予定です。ものすごく忙しく沢山のカリキュラムをこなして頑張っている先生方。短い時間でも効果的な指導ができるように、少しでもお役に立てる話ができるように準備を頑張ります。

園で写真を撮り忘れたので、駅で大山の写真をパシャッ。


2016-03-06

ベビーフェスタ2016にゲスト参加しました。


空耳図書館ミニとしてベビーフェスタで赤ちゃんとパパ・ママたちにパフォーマンスしてきました!(NPO法人らいぶらいぶ主催・相模原市民文化財団共催)

休日という事もあり両親も揃ってご参加の方も多く、30名を越える方に見て聴いてもらいました。僕は10時の回のみでしたが、ダンサーはるなさんは13時の回に出演。

オダサガはアトリエ・ラーノを始めた場所。久しぶりに行きましたが、地域で子ども向けの活動をしている方もこんなにいるんだと嬉しいつながりがいっぱい増えました。ブックチャンスやベビーダンスなどなど他の団体の方の活動も楽しく拝見。

今年の「空耳図書館(ロングバージョン)」は3月20日に開催予定。僕は個人的に4月から親子向けのライブ&子育てサロンを開始予定です。またどこかで再会できる赤ちゃんがいるといいなー。みんな元気に大きくなぁれ!

2016-03-05

鍵盤ハーモニカでファンファーレ(動画)|中日新聞まなぶぅのトントン拍子2016年1月9日号

この週末は卒業式という方も多いようですね。
おめでとうございます!
さて、鍵ハモの先生役を務めた
中日こどもウイークリー1月9日号、
まなぶぅのトントン拍子!「鍵盤ハーモニカ」
の内容がYouTubeで見られるようになっていました!
音楽演奏は紙面ではなかなか伝わりにくいので、
こちらも合わせて参考にしてください。
動画の一番最後では
黒鍵だけで弾ける別の曲として
卒業式の定番曲「蛍の光」もご紹介しています。

お楽しみ下さい。 



まなぶぅのトントン拍子『鍵盤ハーモニカでパフォーマンス』
掲載ページはこちらから。
http://bit.ly/1P3vP7p

2016-03-02

『虹の広場』作曲:橋本知久(動画)〜パフォーマンス「ひろば、うごく」より

昨年の夏、子どもたちによるパフォーマンス『ひろば、うごく』のために作曲した音楽から「虹の広場」をアップしました。上演ではカラーテープでヒトガタをつくったり、舞台上で自由に子どもたちが遊ぶシーンの音楽として使用しました。良かったら聞いてみてください。

2016-03-01

あなたにとっての自由と束縛

枠を外すなんて、簡単なことだ。
壊してしまえばいいのだから。

でも自分が持っているものや背負ってきたものは、
簡単に捨てられないし、捨てちゃいけないし、
それと付き合っていかないといけない。

完璧ってないけどさ、それでいいんだよ。
でも意外と自由なんだ、枠があっても。

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『そこを右に曲がると… いや左かもしれない』
佐藤小夜子 DANCE LABORATORY 2016公演
日時:2016年3月12日(土)①14:30開演/②18:30開演
会場:名古屋市東文化小劇場 ホール

昨年末から作曲を進めてきたこちらのダンス公演も
いよいよ本番まで2週間を切りました。
2年半振りの再演で、初演でも作曲を担当しているのですが、
前回つくった音楽から全編大幅に作りなおしています。

ピアノのワルツ、グリッチノイズのダンスナンバー、
チューバ4本で6音だけで構成した曲、
各地の民族楽器のサンプルを混ぜあわせたものなど、
さまざまな書法が混ざっています。

音楽はほぼ完成。細かいバランスや音色を詰めていきます。
美術や衣裳や音楽などダンスを支える様々な要素もお楽しみください。